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メンタリズムな恋…
第19章 先生、帰ろう



教授と2人だけにされる幸之助だけが真っ直ぐに私を見て嫌そうな顔をする。


「帰るのか?」

「帰るわよ。だから明日は学生寮まで迎えに来てって言ったじゃない。」

「本当に帰るのか?」


しつこいくらいに幸之助が聞いて来る。

捨てられたのは私なのに…。

幸之助の方が捨てられる事に怯えてる。


「明日…、必ず来てよ。待ってるからね。」


幸之助の頬に手を添えて気持ちを伝える。

私は幸之助を捨てる訳じゃないと…。

失う事に怯えてる幸之助にそれを理解して欲しいと私は笑顔だけを見せる。


「……。」


不機嫌な表情で幸之助は無言になる。


「明日、必ずだよ。」


幸之助に念を押して教授の家を出た。

学生寮に真っ直ぐに帰り幸之助の事だけを考える。

私から離れる事を嫌う。

なのに自分は平然と私から離れてしまうという実に身勝手な男…。

教授はそんな気難しい恋人は苦労するだけだと私に警告する。

そりゃ…。

片桐さんは黙って私の傍に居てくれた。

優しさだけを私に与えてくれる人…。

お父さんのような人…。

もう一度、自分の心に問いかける。

幸之助を選んで大丈夫?

幸之助に足りないものを今のレベルの自分でひたすら考える。

幸之助が望むもの…。

それを与える事が私に出来るのだろうか?

幸之助がそこに留まりたいと望む安らぎを…。

母親の温もりを今も探し続けて彷徨う旅人を私のメンタリズムで癒す。

大学院で学ぼうと思う。

私のたった独りの患者の為に…。

幸之助を失ってから怖かった未来を待ち遠しいとまで感じる。

早く朝に…。

早く迎えに来て…。

私と共に歩く未来を幸之助に見せてあげる。

大学に入った頃の希望を持った気分を再び味わいながら眠ってた。


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