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メンタリズムな恋…
第20章 先生…
幸之助だけが私の言葉に目を丸くする。
「あらあら、家族に?」
呑気なお母さんはストレートに私の要望を受け入れてくれる。
「家族に?」
お父さんは少し慎重に聞いて来る。
「幸之助は今、仕事で怪我をして左肩が動かせない状態なの。河合教授だとお世話が大変だから私が連れて帰って来ちゃった。」
少しばかし甘えてお強請りすれば娘に甘いお父さんも納得してくれる。
「怪我を?それは大変だ。うちなんかで良ければ遠慮なく滞在して貰いなさい。」
怪我人を見捨てる両親じゃない。
ここぞとばかりに我が家からの幸之助への恩返しが始まるのはわかってる。
「今晩の夕食は何がいい?大和さんは何が好き?」
幸之助を饗したいお母さんがソワソワする。
「すき焼きっ!」
「それは亜子が食べたいだけでしょ?」
「幸之助もきっと食べたいよ。」
「本当に?」
お父さんとお母さんが同時に幸之助をガン見する。
「いや…、えーっと…。」
幸之助に好きな食事なんか存在しない。
栄養さえ取れれば良いという幸之助ならば宇宙食が出されても気にしない。
「んじゃ、夕食まで幸之助を寝かせて来る。」
何食わぬ顔で幸之助をリビングから連れ出して2階にある私の部屋へと連れて行く。
夏に見た時は私の部屋とは思えない有り様だった。
今はお母さんが片付けてくれたらしく元の私の部屋へと戻ってる。
部屋に入るのを躊躇う私の感情を読み取る幸之助が私の肩へと手を乗せる。
「綺麗にしてくれてるな。」
それはお母さんへの賛美の言葉…。
私の為に元通りにしてくれた部屋なのだから躊躇う必要はないと幸之助が言う。