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メンタリズムな恋…
第20章 先生…
私が傍に居る事が自然で当たり前にならない限り幸之助と家族にはなれないのだと改めて考える。
「ゆっくりと大人になればいいと思うよ。」
私に言いたい事だけ言うとお母さんが私の部屋から出て行った。
入れ替わりに帰って来たのは幸之助…。
「傷の消毒だけ頼む。」
Tシャツにヨレたスウェットのズボンを履いて髪すらまだ乾かしてない幸之助が私の目の前で呟く。
「髪…、ちゃんと拭かないと風邪引くわよ。」
「片手しか上がらないから面倒臭せ…。」
「拭いてあげるからベッドに座って…。」
「だから…、傷の消毒をしてくれって…。」
「消毒は髪を乾かしてからだって…、水飛沫が落ちて来てたら包帯を巻き直しても意味がないじゃん。」
「マジ…、面倒臭せ…。」
露骨に幸之助が嫌な表情をする。
河合教授の家なら無理をしてお風呂に入る必要がなかったからだ。
私の家だから気を使ってお風呂に入る。
汚れたままだとお父さんやお母さんに失礼だと幸之助は気遣いをしてる。
それは他人の反応だ。
お母さんが言うように無理に家族を押し付けてるのは私であり幸之助は被害者にしか感じない。
私は幸之助の事を何も知らない。
あのひと夏を一緒に過ごした幸之助すら今となっては幻のように感じる。
幸之助の傷の手当てを済ませれば夕食。
「お肉が硬くなるからどんどん食べてね。」
お母さんはそう言っても幸之助はすき焼きの鍋を睨んで狼狽える。
家族で鍋なんか食べた事が無い人…。
「食えるのか?」
幸之助が呟く。
教授が買ってくれた焼肉弁当は食べてた。
だから単純にお肉は食べると思ってた。
でも幸之助には鍋の中で煮えたお肉すら生肉との区別がついてない。