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メンタリズムな恋…
第21章 怪しい恋の始まり



今日のランチは数量限定…。

早めに行かなければ終わってしまう。

カフェに向かう私の向こう側の通路をピンク色の集団が横切る。


「先生ぇ…、レポートの課題がわかんない。」

「私もー。」

「それよりも先生、ランチに行きませんか?今日は限定ランチですよ。」


授業が終わった新入生が心理学の新人講師を取り巻いて黄色い声を発している。

くだらない…。

新人講師は河合教授の助手…。

私はその助手を睨み付けてカフェへと急ぐ。

限定ランチには間に合った。

温野菜のグリルとハンバーグ…。

沙莉奈にこのランチを奢らせたあの日が本当に遠い昔のように感じる。

カフェに差し込む春の柔らかな陽射しをぼんやりと眺めてると、その陽射しを遮る人がテーブルを挟んで私の前に座る。


「限定ランチ…、頼んでおいたよ。」


私がその人にそう言っても、その人は笑顔すら見せずに不貞腐れた表情で窓の外を見る。

ありがとうくらい言いなさいよ。

その人の態度にムカつく。

河合教授の新人助手…。

髪はボサボサで黒縁の眼鏡の奥にある瞳が伸び切った前髪のせいでよく見えない。

スリムなジーンズにダサい灰色のトレーナー、一応は大学講師らしくは見えるヨレヨレの白衣を着てるけども、何故、こんな奴が女子大生にキャーキャー言われてるのだとか考える。

私の視線に気付いた講師の口角がゆっくりと上がりニヤニヤとして前髪を綺麗な指先で搔き上げる。


「何よ?」


何がそんなにおかしいのか聞いてやる。


「俺…、今日は金無い。だからランチは勝手に頼んだ亜子の奢りな。」


呟くような小さな声で平然とそいつが言う。


「ちょっ!?冗談でしょ!?」

「マジ…、給料日、明日…。」


殴り飛ばしたい。

なんで、この人はこうなんだろ。


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