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メンタリズムな恋…
第21章 怪しい恋の始まり
「なんで、そんなにお金が無いのよ…。」
呆れてものも言えない。
あのメンタリストで有名な元FBIの大和 幸之助が河合教授の助手としてうちの大学の心理学の講師になったと話題になりテレビにまで出演してたくせに…。
相変わらずの幸之助のテンポについて行けない私ががっくりと項垂れる。
「アパート…、借りるからな。」
「アパート?」
幸之助は今は教授の家の居候。
「講師の給料って死ぬほど安い。そこは亜子も理解しろよ。」
意味ありげに幸之助が呟く。
「知ってるわよ。講師の先生方って准教授になるまで予備校とかでバイトしてる人が多いもん。」
だから大学側は幸之助のテレビ出演を喜んで応援してる節がある。
テレビの時の幸之助はイケメンメンタリスト…。
お陰で小汚い大学講師に女子大生が群がり、私と話せる時間はせいぜいランチの時間だけ…。
それでも…。
教授と学会に行ったり、講師の仕事だったりする日以外は必ず私とランチをする。
「お金が無いくせにランチとかするか?」
可愛げのない言い方を幸之助にしてしまう。
いきなり大学講師になった幸之助に私の心がまだ戸惑ってて落ち着かない。
「亜子が居る。金無くても亜子が出してくれる。」
テーブルに置かれたランチを幸之助がもぞもぞと食べ始める。
「勝手に私が奢るとか決めないでよ。私だってバイトしてないからお金無いよ。」
「あー…。」
白衣のポケットから幸之助が何を出してテーブルの上を滑らせる。
それは銀行のキャッシュカード…。
私に持っておけと幸之助が言う。
「なんで私が!?」
「俺…、ATMとか使えない。毎回、銀行の奴に頼んで下ろして貰うの面倒臭い。」
馬鹿なのか?
一体、幸之助が何を考えてるのか、やっぱり私にはわからない。