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メンタリズムな恋…
第3章 先生、解決しました
「ねえ、先生。さっきの私の古い記憶って…。」
「その話は後だ。」
今は奈々ちゃんの搜索に集中しろ。
無言の先生の言葉が理解出来る。
先生が本気で奈々ちゃんを探してくれる。
それだけでも私の心が穏やかな気持ちになる。
「どこに行くの?」
軽トラックが山間の道路を走る。
「お爺さんが持ってた山…。」
その山は奈々ちゃんの家から軽トラックで10分くらい走った先だと先生が言う。
「3歳の女の子がそんな遠くまで行きますか?」
「道さえ知ってれば行ける。アメリカじゃ3歳の子が電車に乗って隣の州まで行ってた例もある。」
3歳にもなればそれだけの行動をするようになる。
ましてや奈々ちゃんはお爺さんと毎週のように山へ行ってた。
「かなりのお爺さんっ子だったらしいから山に居る可能性が高い。」
先生はそう言って山の麓の山道の前に軽トラックを停める。
辺りは完全な暗闇…。
「これ、持って。」
先生から渡されたのは懐中電灯。
「こんな暗い山に3歳の女の子が?」
「今の時期はきのこが取れる。」
「きのこって秋の物ですよね?」
今は7月…。
夏になったばかりの季節にきのこが生えるとか信じられない。
「夏でも取れるきのこもある。ましてや、そのきのこがお爺さんの好物だったらしいから、それを取りに来て迷子になってるだけだと思う。」
先生が私の頭をポンポンと軽く叩くようにして撫でて来る。
この感覚…。
どこかで味わった覚えがあるのに思い出せない。
「山だから気を付けろ。」
先生の声が一段と低くなる。
この状況でド素人の捜索者が更に遭難するという二次災害を起こす訳にはいかない。