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メンタリズムな恋…
第3章 先生、解決しました
1歩づつ…。
足元を確認しながら山へと分け入る。
真っ暗で懐中電灯が照らす数メートル先しか視界が効かず奈々ちゃんを探す気持ちに焦りが募る。
「先生…、山で探すなら他の捜索隊の方にも伝えるべきじゃない?」
「もう伝えた。だが無視された。」
呟くようにしか答えないが僅かに先生の怒りが伝わって来る。
ここでは私と先生は余所者扱い…。
先生が幾ら凄いメンタリストだとしてもメンタリストという存在に実績が薄ければ先生の扱いも1日署長をやってるタレント並の扱いにしかなってない。
その状況に先生は怒ってる。
私は勝手にそう思う。
だけど…。
「とにかく腹が減ってんだよ。だから、さっさと見つけないと俺もこの山で動けなくなる。」
今はお腹が減ってる事に腹が立ってるのだと更に先生が呟く。
「そこっ!?」
「当然だ。俺はただ横浜に行ってラーメンが食いたかっただけなのに…。」
「しつこいよ。先生…。」
「しつこくない。事実だ。」
「奈々ちゃんよりもラーメンが大事ですか!?」
「俺は俺の腹が大事。動けなくなったら探しに来た意味がない。」
真っ暗な山にどんどんと押し入りながら先生と私はギャーギャーと言い争う。
先生の本音はわからない。
その変わりに私の暗闇に対する恐怖が薄れてくれる。
「ここの帰りに横浜に寄りますから…。」
「この時間じゃもう閉まってる。」
「だったら奈々ちゃんを早く見つけて明日もう一度横浜に向かって走ればいいだけです。」
そろそろ夜の9時…。
先生が言うように私もお腹が空いて来た。
でも奈々ちゃんは私達以上に苦しんでるはず…。
それを考えると山に踏み込む足が早くなる。
「止まれ…。」
先生が止まり懐中電灯で何かを照らす。
それはピンク色のポシェット…。
泥だらけではあるが中には黄色い萎びたきのこが詰まってるから奈々ちゃんのものだと確信する。