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メンタリズムな恋…
第5章 先生、何処に行ったの?
「ごちそうさん。じゃ、支払いはよろしく。」
そう言う先生が私にラーメン2と書かれた伝票を押し付けて席から立ち上がる。
「へ?」
てっきり先生の奢りだと思ってた。
「俺、金なんか持ってないよ。亜子は河合教授から経費を貰ってるだろ?」
先生がまだ座ってる私を見下ろす。
確かに経費は貰ってる。
そして先生の助手であるからには支払いは私が行うべきだと先生が主張する。
「4千円になります。」
おかしなイントネーションのチャイナお姉さんにレジでそう言われて固まった。
4千円!?
大学のカフェのランチなら5回は食べられるという金額じゃないか。
なんで、わざわざこのラーメン!?
車に乗り込み先生に文句を言う。
「あんなに高いラーメンをわざわざ横浜に来て食べる理由はなんなのですか?あれなら学食のラーメンの方がよほど美味しいと思うけど…。」
文句を言う私を先生は面倒臭そうに見る。
「亜子の大学の学食のラーメンは薬膳なのか?そりゃ、随分と珍しい大学だな…。」
先生が呟く。
「はあ?普通のラーメンですよ。」
「俺は薬膳を食いに来たんだ。あの店は中華薬膳の専門店だ。」
それだけを言うと先生は助手席で膝を抱えて踞る。
「薬膳?」
「いわゆる健康料理。あのラーメンには夏バテ防止効果とか体力増強の食材や薬剤が入ってる。」
「そんな効果のある料理なんですか?」
「最近は日本でも薬膳を出す店が増えたらしいが本場中国の薬膳を出せる店はあそこだけだ。」
知らなかった。
たかが食事…。
されど食事…。
ボロ雑巾がそこまで考えて食事をしてるとか考えてもみなかった。