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メンタリズムな恋…
第5章 先生、何処に行ったの?
夕べは横浜を越えて静岡に向かう事を躊躇ったくせに今は1人で富士を越えてるとか…。
どんだけお騒がせ人間なんだ!?
泣いてる自分が馬鹿みたいに思える。
「追いかけますか?」
片桐さんが車の鍵を見せて聞いて来る。
「捕まえて下さい。」
気分は犯人逮捕な私。
片桐さんは警視庁のエリート刑事。
必ずやボロ雑巾を捕まえてくれると確信する。
いざ、ボロ雑巾逮捕へと私は張り切ってペントハウスを出る。
やたらと張り切る私を見てくすくすと白馬の王子様が笑ってる。
「何か…、おかしいですか?」
片桐さんが運転する車の助手席で私は口を尖らせる。
「いえ、よほど大和さんが心配なんだと…。」
片桐さんは穏やかな声で話をする。
「心配なんかしてません。あのお騒がせ男、見つけたらただじゃおかないんだから…。」
私にバイト失敗の責任を負わせる先生を恨む。
「いつから大和さんの助手に?」
「実は昨日からなんです。そういうバイトがあるって河合教授の紹介で…。」
「そっか…、河合教授の講座の子だっけ?」
「河合教授をご存知ですか?」
「そりゃ警視庁では、かなり教授のお世話になってるからね。」
爽やかに白い歯を見せて笑う片桐さんにちょっとだけときめいちゃう。
やっぱり河合教授って凄い人だと教授を自慢する私も片桐さんに笑顔を向ける。
先生を探しに静岡方面に向かう高速道路を走りながら片桐さんとはスムーズに会話が成り立ってる事が嬉しくなって来る。
「三好さんのバイトはいつまで?」
「教授からは一週間って聞いてます。先生の日本滞在中がそのくらいなのかも。」
「大和さん、やっぱりアメリカに帰るのかな?」
「さあ?知りませんよ。あんなボロ雑巾の事は…。」
片桐さんの言う『アメリカに帰る。』という言葉には何故かチクリと胸が痛くなる。