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メンタリズムな恋…
第1章 怪しいバイトの始まり
「全然、大丈夫ですよ。」
教授の笑顔には必ず笑顔で答えるようにしてる。
前期試験の終わった何もない7月…。
現在4年生の私は卒業までの単位を済ませた。
就職活動をしない私に今必要な事は卒業論文を書き上げるくらいで他にしなければならない事がない。
「なら、行こうか。」
教授が車の鍵を私に預けて研究室を出る。
教授と出掛ける時の運転は私がする。
大学の外に出る時はいつもそうだ。
だから他の学生からは私が教授の愛人じゃないかと噂が立ち、それを沙莉奈が心配する。
残念ながら河合教授とはそんな甘い雰囲気になった事がない。
教授は私を本当の娘のように扱う事はあっても女性としては見ておらず、教授の財布には常に奥様の写真が入ってる事を私は知っている。
メンタリストの奥様…。
教授にメンタリズムで口説いたのかと冗談で聞いてみた事がある。
その時の教授は赤く頬を染めて
「それが、全然上手くいかなかったよ。自分が本当に好きな人の前じゃ薄っぺらなメンタリズムなんか通用しないって事だね。」
とはにかんで笑った。
今もその奥様を愛してると感じる教授を私は全面的に信頼する。
世間は私が教授のメンタリズムに騙されて教授の都合の良いように扱き使われてると勘違いをしてる。
それでも構わないと思う。
教授に仕える事が私のメンタリストへの間違いのない道だと考えてる。
私もいつか教授のようなメンタリストになり社会に役立つ使い道を模索したいと思う。
「どちらまで?」
行き先を教授に確認する。
「ホテル茅野まで…。」
教授が指定した場所は有名な高級ホテル。
そんな場所に無縁の私は微妙に緊張を隠せない。
「三好君…、大丈夫?」
教授とホテルという状況に期待するような顔をする私を教授が心配そうに覗き込む。