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メンタリズムな恋…
第6章 先生、繋がってます



「嫌われたって片桐さんが落ち込んでますよ。」

「亜子に?」

「先生にっ!」

「片桐は亜子が居たらいいんじゃねえの?充分に嬉しそうな顔してたぞ。」


そんな言われ方をすればドキリとする。


「私は関係ないもん。」

「片桐はそう思ってねえよ。」

「変な事言わないでっ!」


片桐さんに恋してるとか、まだ自分でもよくわからないから先生から言われると顔が勝手に熱くなる。

先生の車に乗り込み行き先を聞く。


「まさか、今から神戸の肉まんが食べたいとか言わないですよね?」

「ホテルに帰る。飯はルームサービスでいいや。疲れたから早く寝たい。」

「わかりました。」


今夜は大人しくホテルに帰ってくれると言うだけで幸せな気分になる。

鼻歌を歌いながら先生の車を運転する。


「事情聴取がそんなに楽しかったのか?」


先生が呟く。


「先生の方は楽しくなかったのですか?」

「俺の方は事情聴取じゃなかったからな。」

「違うの?」

「色々とあるから…。」


先生がまたふてくされる。

だけど時々、悲しげに窓の外を見る先生に切ない気持ちが湧いて来る。

何がそんなに辛いの?

そう聞きたくなる。

私がちゃんとしたメンタリストなら先生の気持ちを理解してあげられるのに…。

手が届かないもどかしさ…。

子供のように踞る先生の力になりたいと心底から願わずにはいられない。

私じゃまだ力不足…。

ホテルに着きペントハウスに向かえば扉の前に立つ警護の人が先生に敬礼する。

先生はそんな人など見えない素振りでペントハウスの中へと入ってく。


「挨拶くらいしてあげれば?」

「誰に?」


いつも通りにとぼけた答えだけが返って来る。

いつかは、この人と普通に意思の疎通が出来る日が来るのだろうか?

私の不安などを他所に先生がスウェットのトレーナーを脱ぎ捨てる。


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