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メンタリズムな恋…
第7章 先生、逃げられないよ



寝室に戻り普段からの学校へ通う服に着替えをする。

ラフなパンツスカートに袖なしのブラウス。

河合教授の手伝いばかりを心掛ける私は動きやすい服装しかした事がない。

軽くメイクをしてリビングに行けば私の口がポカンと開く。


「せ…んせ…。」


大和 幸之助が居る。

ヨレヨレスウェットにトイレサンダルのボロ雑巾ではなく、スマートなグレーのスーツにネクタイを締めた流し目の貴公子が私を待つように立ってる。


「車の鍵を寄越せ…。」


はっきりとした口調。

やっぱりボロ雑巾とは別人に見える。


「亜子?」


ぼんやりとする私の顔に先生の手が触れて来る。


「だ…、大丈夫です。」


バッグの中を漁るようにして先生の車の鍵を出す。


ガチャ…、チャリーンッ…。


焦る私の手からは車の鍵が滑り落ちる。


「すみません…。」


それを拾おうとした。

なのに先生が私の手を引き寄せる。

すっぽりと先生の腕の中に収まってた。

先生は穏やかな表情で微笑んでる。


「大丈夫…、亜子…。亜子に怖い事は起きない。」


私の前髪を避けるようにして指先で額を撫でる先生の言葉にときめきを感じる。

この感覚…。

またデジャヴ…。

先生の指先が私の顎を持ち上げる。

もう慣れたキス…。

暖かく優しいキス…。

先生が居る限り私に怖い事は起きない。

それはメンタリズムに寄る洗脳かもしれない。

それでも今の私は先生にしがみつく。


「行くぞ。」


キスが離れて先生が落ちた鍵を拾う。

いつもならお腹が空いたしか言わないくせに…。

私の手を包むように握ったままの先生がペントハウスから出て行けば入り口に立つ警護の人が先生と私を不思議そうに見る。


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