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メンタリズムな恋…
第8章 先生、帰るから待ってて



「犯人…は?」


喉が乾き、慌ててミネラルウォーターを飲む。


「石井 宏伸(ひろのぶ)。当時は21歳の大学生ですが大学は休学中でした。」


そう言った片桐さんの顔が歪む。


「その人が…。」


今回の犯人?

私の質問に片桐さんがゆっくりと頷く。


「石井は確かに警察に身柄を保護されました。しかし彼は逮捕には至らなかった。」

「どうして?」

「一つは無事に保護された三好さんが何も覚えてなかったからです。」

「私が?」

「ええ、誘拐などまるでなかったかのように貴女は事件の事も石井の事も覚えてませんでした。」


幾ら3歳だったとしても見知らぬ人に拐われたなら何かを覚えてる。

片桐さんの言う通り、私に誘拐の記憶はない。


「何故、覚えてないの?」

「それを知ってるのは大和さんだけです。」


だから片桐さんは先生を信用出来ないと本音をぶつけて来る。


「更に、石井は自首という形で弁護士を付けて出頭して来ました。元々、石井には精神的疾患があるとして医師の診断が出てたのです。」

「そんな…。」


精神的疾患がある患者の多くが刑事責任が問えないと判断され検察は起訴を諦める。


「当時、石井の父親は検察に務める検察官であり検察を辞職すると共に息子を精神病院に入院させるという条件で石井は逮捕を免れたのです。」


片桐さんは悔しげに唇を噛み締める。


「病院にはいつまで入院してたの?」


病院に入院してた人物が今更私をストーカーする理由が全くわからない。


「先週には退院をしてます。先月、石井の父親が亡くなった事も退院の理由になったようです。」


その全てを先生は知ってた。

知ってて日本にやって来た。


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