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メンタリズムな恋…
第8章 先生、帰るから待ってて
知ってて何も教えてくれない。
怒りよりも悲しみが湧く。
「本当はこういう事を言うと不味いけど…。」
泣きそうになる私を片桐さんが抱き寄せる。
「僕が貴女を守ります。」
片桐さんが小さな声で呟く。
「片桐さん…。」
「上にバレたら僕はこの事件の担当を外される。だから個人的な感情を三好さんには持ち込めないと思ってました。でも貴女が危険だとはっきりとした今は僕が貴女を守りたい。」
照れたようにはにかむ片桐さんが下を向き私から視線を逸らす。
優しい人…。
誰よりも正義感が強く警察官としてだけでなく本気で私を守ろうとしてくれる。
この人は本当に白馬の王子様だと笑っちゃう。
私はお姫様のように閉じ込められて守られるだけの女の子…。
事件の記憶もなく、怖いからと怯えて逃げてれば片桐さんが守ってくれる。
本当にそれでいいの?
自問自答する。
私がなりたかったものは…。
「帰ります。」
笑顔で片桐さんに言う。
片桐さんは少し驚いた表情を見せる。
「学生寮の方にですか?すぐに三好さんの警護の手配をします…。」
「警護の必要はありません。」
「しかし…。」
「とりあえずは河合教授のところに行くつもりですから…。」
「河合教授の?」
「今は教授と相談して今後を決めたいの…。」
今の大学生活では河合教授が私の親代わりだと思う。
教授にも私が知りたい事を教えて貰う必要がある。
「河合教授の居場所を確認します。可能なら教授に迎えに来て貰いますから…。」
名残りを惜しむように片桐さんが私から離れる。
彼は刑事…。
今は個人的感情を仕事に持ち込む事が出来ない。
この事件が終わるまで私に対して片桐さんは刑事という態度を貫く事を決めた。