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女教師と男子生徒、許されざる愛の果てに~シークレットガーデン
第5章 禁域
 大体、まともな人間が一日中、アパートの壁に耳を貼り付けて他人の密事(みそかごと)を追及するだろうか。アパートの他の住人にも見られただろうし、普通の神経なら、そんな場面を誰かに見られただけで恥ずかしくて立ち去ってしまうに違いない。
 そこまでの執着というか執念が、心優は心底怖ろしい。
 本井が抑揚のない声で言った。
「一度は愛していた人だ、私はあなたを告発するつもりはありません。私は今日、何も見なかったし聞かなかった。あなたにも出逢わなかった。もし、今日の件について誰かに追求されたとしても、シラを切り通して下さい」
 本井は言うだけ言うと、踵を返して歩み去っていった。心優はまさか何かされるのではと身の危険を憶えていただけに、本井があっさりと帰っていったことに心から安堵した。
 遠ざかる背中を見つめながら、ふと、この男もまた形は違えども、本当に自分に好意を寄せてくれていたのかもしれないと思った。
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