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独占欲に捕らわれて
第8章 独占欲に捕らわれて
「あぁ言えばこう言うというか、なんというか……。まぁいいわ。はやく行きましょ」
「あっはは、そうだね。はやくあそこのアイス食べたいなぁ」
ふたりは肩を並べ、アイスクリーム屋へ行く。

「チサちゃん、なにがオススメ?」
紅玲は外にあるメニュー一覧を見ながら聞く。
「チーズベリーね」
「じゃあそれにしよっと。確か、ここで再会した時も食べてたよね?」
「よく覚えてるわね……」
千聖が感心したように言うと、紅玲は得意げに笑う。
「まぁね。元々記憶力はいいし、好きな子のことなら、どんな小さなことでも知っておきたいからね」
千聖が何か言いかけると、紅玲は入ろっか、と彼女の手を引いた。

店に入れば、元気な女性店員がにこやかにいらっしゃいませと声をかけてくれる。並んでいる客はおらず、ふたりはすぐにレジ前へ行く。
「ご注文はお決まりでしょうか?」
「チーズベリーをワッフルコーンで。チサちゃんは?」
「同じものをお願い」
店員は微笑ましそうにふたりを見ながら、注文の繰り返しをして会計を済ませる。ふたり分のチーズベリーをすくってスコーンに入れると、小さなチョコレートアイスをのせてくれた。

「こちら新商品のショコラオレンジです、ご試食どうぞ」
「へぇ、美味しそうだね。ありがと」
紅玲が笑顔で受け取ると、店員は顔を赤くして俯く。千聖はそれを複雑な心境で見て、困惑する。
(なんで私がこんな気持ちになるのよ……)

「はい、どーぞ」
紅玲はアイスを千聖に差し出す。
「え? あ、ありがとう」
我に返った千聖はアイスを受け取ると、空いている席がないかと店内を見回した。

「あそこが空いてるわね」
窓際にある、ふたり掛けの席を指さした。
「じゃああそこで食べよっか」
席に座ると、紅玲はさっそく試食にもらったショコラオレンジを口にした。
「うん、甘さ控えめだけど、すごく美味しい。チサちゃんも食べてみなよ」
紅玲に言われて千聖もひと口食べる。紅玲の言う通り、甘さ控えめな濃厚ショコラの味が広がり、一足遅れてオレンジの爽やかな酸味と香りがやってくる。
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