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独占欲に捕らわれて
第8章 独占欲に捕らわれて
「なかなか美味しいじゃない。今度来た時にでも、頼んでみようかしら?」
「チサちゃんの舌は大人だねぇ。これはこれで美味しいけど、オレは普通のチョコレートアイスの方が好きだなぁ」
そう言いながら、今度はチーズベリーをすくって頬張った。
「こっちの方が甘くて美味しい。チサちゃんと来なかったら、きっとずっと食べてなかったなぁ。今日チサちゃんと来られてよかった」
無邪気に言う紅玲に、千聖はぶっきらぼうにそう、と返すことしかできなかった。

「ねぇ、どうしてここに来ようと?」
「んー、本当はもうちょっとはやくに来たかったんだけど、時間なかったからさ。夕方にアイス屋さんって、なんだか学生デートみたいじゃない?」
紅玲はイタズラっ子のように笑うと、長い舌を伸ばして、ペロリとアイスを舐めた。
「じゃあなに? この後はどっかのゲーセンかカラオケにでも行って、それからファミレスにでも行こうって?」
「それはそれで楽しそうだけど、今回はレストランを予約してあるからね。チサちゃんがそっちの方がいいって言うなら、そうするけど、どうする?」
「いいわよ、予約してあるんでしょ?」
千聖がそう答えると、紅玲は満足げな笑みを浮かべる。

アイスクリームを食べ終えて店を出ると、どちらからともなく手を繋ぐ。
「レストランはどこにあるの?」
「ここから2駅乗って、少し歩いたところだよ」
紅玲の言葉にデジャヴを覚えながらも、千聖は大人しくついて行く。

着いた場所は、契約をしたあの高級フレンチだ。
「これはどういうことかしら?」
「違うお店がよかった? どんなところがいい?」
紅玲はスマホを引っ張り出しながら言う。

「そういうことじゃなくて……。まぁいいわ、中に入りましょうよ」
「うん」
何故か紅玲は嬉しそうに、千聖を店内へエスコートする。前回と同じ個室に通され、値段が書いていないメニュー表が目の前に置かれた。料理を選んで紅玲に注文してもらうと、千聖は彼をまっすぐ見つめた。

「なぁに? そんな熱烈な視線くれちゃって」
「どうして今日は、契約した日と同じような行動をするの?」
千聖が問い詰めると、紅玲はイタズラが見つかった子供みたいな顔をする。
「あっはは、バレちゃった?」
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