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独占欲に捕らわれて
第8章 独占欲に捕らわれて
紅玲は熱っぽい目で女性を見ながら、何度も口を動かす。千聖にはそれが愛を囁いているようにしか見えず、嫉妬にかられる。
(私のこと好きって、愛してるって何度も言ってたのに! 紅玲はそんな女を選ぶの? 嫌よ、そんなの……。あんな女に、紅玲は渡さない!)
千聖の中で嫉妬の炎が燃えたぎる中、ふたりはおかまいなしに互いの躯に触れる。女性は紅玲のペニスを咥え、頭を上下に動かす。紅玲は気持ちよさそうな顔をしながらゆるゆると腰を振り、女性の髪を撫でる。

ふと、紅玲はなにか思い出すような顔をすると、こちらに向かって妖艶な笑みを浮かべる。だがすぐに視線を女性に戻し、彼女の髪を撫で続ける。
(ひどい……! なんで私にこんなの見せつけるのよ!? 紅玲から離れなさいよ、このアバズレ! 紅玲は私のものなのに……)
嫉妬や戸惑い、更には独占欲でぐちゃぐちゃした感情が渦巻き、千聖は今にも気が狂いそうになる。目頭が熱くなり、涙が溢れる。薬のことなど関係無しに、千聖は叫んだ。声が出ていようがいまいが、関係ない。叫ばずにはいられなかった。

「私の紅玲よ! どうせお金が目的でしょ!? 離れなさい、このろくでなし! 紅玲も紅玲よ……。私のこと愛してるなら、そんな女いらないでしょ!? 今すぐ追い出してよ!」
のどは相変わらず閉塞感で満たされ、聴覚も奪われている。それでも普段使わない罵詈雑言を女性に浴びせ、紅玲は自分のものだと叫び続けた。

紅玲は絶頂を迎えたらしく、ベッドに寝そべる。女性はティッシュに紅玲の欲を吐き出すと、うがいしに消えた。
「なんてもったいないことするの!? 信じられない!」
千聖の言葉が途切れたタイミングで紅玲は起き上がり、笑顔でこちらに手を振った。
「紅玲、あなた最低よ! 私がいるのにあんな女と! 許さないんだから!」
実際にはこれらの声はふたりに届いていない。だが怒り狂った千聖には、そんなことは頭の片隅にすら残っていない。

女性が戻ってくると紅玲は彼女にお金を渡し、女性はそれを受け取って部屋から出ていった。
「結局金だけじゃないの! 紅玲、あなたいつまでこんな女に騙され続けるつもりなの!?」
画面から紅玲が消え、トイレのドアが開けられる。千聖は潤んだ瞳で紅玲を睨みつけた。
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