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独占欲に捕らわれて
第1章 困った親友
千聖からすれば男は、性欲を満たす金づるでしかない。そんな彼女からすれば、彼氏いないと死んじゃう病の優奈は理解不能の生き物だ。

「お待たせいたしました」
今にも死にそうな顔の男性店員は、チキンドリアとモーニングトーストを運んできた。
「お腹減ったぁ! 食べよ食べよ」
優奈はスマホを置くと、嬉しそうにスプーンでドリアをすくう。
「こんな早朝から、よくそんなの食べられるわね……」
千聖は疲れきった目で優奈を見ながら、トーストをかじる。

「だって美味しいんだもん」
「見てるこっちが胃もたれしそう……」
千聖は自分のお腹をさすりながら言う。
「それを言うなら、こっちはお酒呑んでる千聖見て胸焼けするわ」
優奈は苦笑すると、メロンソーダをひと口飲んだ。

「そう?」
「そうよ。昨日だってハイボールとか焼酎とか、水みたいに呑んでたじゃん」
「あれくらいで酔うわけないでしょ」
千聖はそういうが、昨夜の彼女はハイボール3杯にビール1杯、焼酎4杯も呑んでいるのだ。

「ホント、酒豪だよねぇ……。ところでさ、千聖は彼氏作んないの?」
勿体ない、と優奈は唇を尖らせる。
「めんどくさいし、そもそも男が少ないじゃない」
「自分より呑めない男は男じゃない! なんて言ってるからでしょー?」
優奈はため息をつく。

「そもそもいらないからいいの」
千聖は声に苛立ちを孕ませながら言うと、トーストをかじった。
千聖は本人が言うように、元々恋愛に興味がなかったのだが、優奈が原因で尚更恋愛が嫌になったのだ。高校時代、千聖が優奈の彼氏に呼ばれただけで、優奈の昼食であるホイップパンが、千聖の顔にクリーンヒットしたり、このカップルに何かある度に、とばっちりを受けるのは、いつも千聖だ。
それでも千聖が優奈といるのは、千聖の美貌を妬まないでいてくれるからだ。

「恋はいいよ。恋をすれば人生薔薇色だもん」
千聖の苛立ちに気づかない優奈は、うっとりしながら言う。
「へぇ、そう」
めんどくさくなった千聖は適当に流すと、最後のひと口を食べて立ち上がった。
「ご馳走様、悪いけど寝るわ」
「あいあい、おつかれー」
優奈は片手をぶんぶん振った。
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