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ソレは、二十歳になってか……ら……?
第4章 約束(後日談)
「どうぞ」
部屋の主が手ずから目の前に置いてくれたカップから、紅茶の良い香りが漂って来る。
シンプルだけど温かみのあるインテリアの、明るくて居心地の良い応接室。そこの革張りのソファに、私は腰を掛けていた。
「ありがとうございます、頂きます」
お辞儀をして、出された紅茶を一口頂く。花の香りにも似た爽やかな芳香が体中に広がって、ほっと肩の力が抜ける。
「お忙しいのにお時間頂戴してしまって、すみません」
緊張が解けたからか、用意して来たご挨拶が、するりと口から滑り出た。
「良いのよ。むしろ、役得?……光に知れたら、怒鳴り込まれるかも」
笑ってウインクした橋本さんは、お茶菓子も有るのよ?直で悪いけど好きなの摘まんで、って、可愛らしい模様のアソートクッキーの缶を出して、蓋を開けてくれた。
「……で?話しときたいことって、なあに?」
丸いクッキーを摘まんだ橋本さんにつられて、赤いドライフルーツが真ん中に付いたクッキーを一枚いただく。
「……私とヒメ、今年で二十歳になったんです」
「あらま!そーなの?!ついこの前まで、制服着てたのにねえ!!早いわねえ、おめでとう!」
「ありがとうございます。それで……うちで、四人でお酒を飲みました」
「……あー…………お酒、ね……」
機嫌良く話してくれてた目元が、ちょっとだけ険しくなる。
橋本さんは、良い人だ。厳しい所も有るけど、愛情深くて、親切で……それに、察しも良い人だ。
そして、光と……ヒカリさんとお酒を飲んでお説教した事が有るって、ヒメから聞いた。
「……別れたくなっちゃった?……それとも、」
橋本さんは、食べ終えたクッキーを摘まんでた指を、可愛い柄のハンカチを出して拭って。
「……もしかしたら、オメデタかしら?」
すごく優しく、微笑んだ。