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ひと夏の恋……そして……
第5章 運命のいたずら
「そうでした。弊社の都合で申し訳ありませんが、今推し進めているリゾート開発の担当が変わりましたので、その報告とご挨拶を兼ねて伺いました――こちらは佐伯コーポレーションの副社長、佐伯千春です」
そう言って紹介されたのが、真和を抱いている男性だった。
「佐伯……千春さん?」
「ご挨拶が遅れて申し訳ありません。佐伯コーポレーションの……」
ポケットから名刺を取り出そうとしても真和を抱いているから取り出せないようで慌てていた。
「すいません。いつまでも抱かせたままで」
私の方も慌てて真和を引き取ろうとしても、真和が男性から離れたがらないように抱きついていた。
「真和、迷惑だからおいで」
真和は私の声など聞こえないように男性に抱きついたままだった。
「このままでいいですよ。名刺は後で渡しますが、佐伯コーポレーションの佐伯千春と申します」
男性は改めて『佐伯 千春』と名乗って軽く頭を下げた。
だけど私の知っている彼の名とは明らかに違う。