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ひと夏の恋……そして……
第5章 運命のいたずら

「私の顔に何か?」

あまりにもジッと見ていた私に佐伯さんは困った顔をした。

「あっ!えっと……千春さんってお名前なんですか?」

「はい。そうです。佐伯千春……女の子のような名前で嫌なんですけどね。」

そうやって笑う顔はどこをどうみても彼だった。
だけど名前が違うし、私のことを覚えてもいないし、私に気が付かないはずがない。
そう考えると他人の空似……と考えるしかなかった。

「それで真緒さん。我々の会社と佐伯コーポレーションとでこのリゾート開発を推し進めることになったんです。ですので規模は以前より大きくなると思います。島民の皆様にも今まで以上のご提案ができると思いますのでご協力をお願いできませんか?」

お願いとは土地を売ってくれという話で、私たちの島への愛を分かってくれてはいない。
会社が変わろうとそれは変わっていないないようだった。

「西条くん、その話はまだいいでしょ」

「副社長!?」

頭を下げる西条さんと違って、佐伯さんは海を眺めてのんびりした口調だった。


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