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ひと夏の恋……そして……
第6章 忘れられない夏

「少し寒い?」

浮き輪につかまっている和泉の唇が青いのに気が付いて聞けば、小さく頷いた。
私は浮き輪に乗って手と足を海から出しているから気にもしなかったけど、ずっと海に入っていた和泉は海水に体温を奪われ寒そうに震えているのに気が付いてあげらるなかった。
それに1時間近く水分補給もしていないからと慌てて砂浜に上がっても和泉は辛そうにしていた。
どうにかパラソルのところまで戻り、水を飲ませて羽織る物をと探しても何もない。
考えなしに和泉を海に連れて行ったことを後悔する。

「そんな顔しないでよ」

「でもっ……」

私に心配かけさせまいと笑う和泉の表情を見て私の方が心配になる。

「和泉……」

「本当に大丈夫だから、楽しくてはしゃぎすぎただけだから心配しないで」

心配しないでと言いながら呼吸が荒くなっているのが分かり、慌てて夏樹に電話した。
1回、2回とコール音が静かに鳴り響き、スマホを握る手が白くなるほど強く握りしめていた。


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