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ひと夏の恋……そして……
第6章 忘れられない夏
それから10分もしない内に夏樹が走って来てくれた。
「真緒!和泉!」
夏樹の声が聞こえた途端涙があふれてきた。
これで安心だと思ってホッと一息ついた時、夏樹が初めて声を荒げた。
「真緒!何やってんだ!こいつに無理させるな!」
その罵声に父親に怒鳴られていたことを思い出して恐怖がよみがえった。
そんなことに気が付かない夏樹は、持ってきたバスタオルで和泉を包んで額に手を置いて眉間に皺をよせていた。
「夏樹、心配してくれるのはありがたいけど、真緒を叱るのはお門違いだよ」
「何言ってるんだ、こんなになるまで無理させたんだろう」
力なさげに笑う姿が痛々しくて、夏樹の言う通り私が無理をさてしまった結果がこれだと唇をかみしめてうつむいた。
「だから違うって、それに真緒は何も知らないんだ。僕が自分で気が付くべきだったんだよ。だから真緒を叱らないで、それに真緒が怖がってる」
ハッとしたように私の方に目線を向け、今の状況を把握した夏樹は手を伸ばしてきた。
だけど、その行動が叩かれるんじゃないかと錯覚を起こして身体を固くすると、夏樹は手を引っ込めてもう一枚のバスタオルを私の背中にかけてくれた。