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ひと夏の恋……そして……
第2章 逃げてきた場所
――来るんじゃなかった……
瞳を閉じて大きなため息を吐いた。
ここにいればもっと自分が惨めに感じると思った私は、窓からこっそりと裸足で抜け出し、歓声を上げる人たちを横目に早足で通り過ぎる。
同じ年齢の子も数人いるけど私とは大違い。
どうしてこうも違う人生を歩まなければいけないんだろう。
彼女たちと違って私の手には何もない、お金もなければ売れるものもない。
夢見る未来もなければ、生きていく価値さえもない。
そう思ったら死んじゃったほうがマシなのかもしれないと、暗い海を見ながら思う。
もっと前に死んでいればこんな想いもしなくてすんだかもしれないと思うと、生にしがみついてるのが馬鹿らしく思えてきた。
トボトボと海に向かって足が進む。
死ぬことに関して怖くはない。
この気持ちがなくなるのであれば、それは幸せな事。
パシャンと私の足に波が当たり、水しぶきを上げ一気に引いていく。
それに引き寄せられるかのように私の足は深い海の中に誘われる。