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ひと夏の恋……そして……
第2章 逃げてきた場所
「君、何してんの?」
急に腕を取られ、背後から声をかけられた。
ゆっくりと振り返ると背の高い男性が私の腕を取り、声とは違う険しい顔で私を見ていた。
「こんな夜遅くに何してんの?」
さらにもう一度、同じ言葉を投げかけてくる。
――何をしてるか……
暗い海の方に目線を向ける。
私の死に場所……
私の居場所……
「私は……」
一粒の涙が海の中に消えた。
「とりあえず、砂浜に戻ろうか?」
何も話さず暗い海を眺めている私の腕をぐっと引いて砂浜まで引っ張っていく。
抵抗しようとしたけど、人に見つかってしまえば死ぬことは叶わない。
今日が駄目なら明日でもいい。
時間なら余るほどあるんだからと諦めた。
それでも何度も暗い海に目線を向けては、後ろ髪を引かれる思いで砂浜に上がった。