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ひと夏の恋……そして……
第9章 彼と秘密の時間

「あ~……それより幽霊の話聞いてる?」

「幽霊?」

何かを思い出したかのように聞いてくるナベさんに私と叔母さんは問い返す。

「そうなんだ。夜中になると人のうめき声が聞こえるらしくて、それがどこから聞こえてくるのか分からないって言うんだよな」

ナベさんの話は初耳で、叔母さんとソンちゃんと首を傾げてナベさんの話の続きを聞いた。

「なんかさ。夜の浜辺で遊んでた観光客が聞いたって盛り上がってるらしいんだ。それに人影がスっと消えていったとか。夏の夜に肝試しって定番だから気にもしてないんだけどさ。用心に越したことはないと思ってさ。真緒ちゃんも外をうろつくときは気を付けなよ」

幽霊の話に何を気をつけろと言っているんだろうと思っていると叔母さんが納得したかのように頷いた。

「今のご時世、何があるかわからないからね。でも真緒は大丈夫よ。夜中に出歩くこともないし、遅くなる時は夏樹ちゃんか和泉ちゃんが一緒だからね」

「そうだな。でも変なことが起きて騒ぎになるのも面倒だから夜遅くに出歩かないようには観光客には言ってるらしいんだ」


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