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ひと夏の恋……そして……
第9章 彼と秘密の時間
「夏樹っ、あのね」
「どうした?真緒?」
言葉に詰まる私を見て心配そうに顔を近づけてきた。
唇が触れるか触れないかの距離まで近づいてきたとき、とっさに夏樹の胸に手を宛てて距離を取った。
「真緒?」
「叔母さんがいるのにしないでよ!」
驚く夏樹に咄嗟に嘘をついた。
和泉とつきあっていると素直に言えばいいのに言えなかった。
「気づいてね~の?用事済ませてくるってでかけたよ」
夏樹の言葉に厨房の中を覗き込めば叔母さんの姿はなかった。
棚の上に叔母さんのエプロンがあるから本当に出かけたようで、今は夏樹とふたりっきり。
「だからさっ。少しだけでも真緒を感じたいんだ」
夏樹の腕が私の首筋に触れようとした瞬間、逃げるように厨房に入って食べ終わったばかりの皿を洗い出した。
「真緒?」
「そういえば和泉は?様子を見に行かなくていいの?」
変なことを言われる前に話題を変えた。
休憩時間になれば和泉が絵を描いている場所で合流することになっているから気にもなっていた。