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ひと夏の恋……そして……
第9章 彼と秘密の時間
「そうだな、あいつは絵を描きだすと周りが見えなくなるしな」
「そうだよ。また倒れたら大変だから先に行っててくれる?片付けてアイスコーヒー持っていくから」
「なんだ、またコーヒーか。じゃ先に行って様子をみてくるわ」
何にも疑問に思わない夏樹は、私の言葉を鵜呑みにして笑顔で出て行った。
それにホッとした私は、少しだけ時間をずらしてコーヒーを持って和泉のもとに足を運んだ。
そこには相変わらず絵を描き続ける和泉と、その横で寝転ぶ夏樹がいた。
「はい、コーヒー」
水筒に入った冷たいコーヒーを渡せば和泉は一気に飲んで一息つく。
「今日も暑いんだから無理しないでよ」
「無理はしていないよ。こうやって真緒も夏樹も気を使ってくれるからね」
和泉の視線を辿ればいまだに気持ちよさそうに眠っている夏樹の姿があった。
ここに来てすぐ眠ってしまったという。
民宿の手伝いに私の勉強と無理をさせているのは分かっているから起こさず寝かせておくことにした。