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ひと夏の恋……そして……
第10章 夏の終りと共に
「夏樹……?」
だけど、そこにいたのは夏樹で、私の声に気がついた夏樹は壁に預けていた身体を起こすと一瞥するように私に視線を向け、今まで聞いたことのないような低い声で私に問いかける。
「早い帰りだな?」
夏樹の言葉に私は咄嗟に振り替えり、和泉の車が走り去った後を確認して胸を撫でおろした。
少し離れたところで車を降りたから気が付かれてはいないと、何とかごまかそうと頭を回転させる。
「早い帰りって何言ってるのよ。朝早くに目が覚めたから散歩をしていただけだよ。それより夏樹もどうしたの?まだ5時だよ?夏樹も目が覚めちゃって散歩?」
「そうだな~~。まだ、5時だよな」
「そうだよ、まだ5時だよ。」
ふっと笑った夏樹を見て誤魔化せたと思っていると、次の瞬間には真顔に代わる。
「朝出かけたならそうだろうさ。けどな、夜中にでかけたら、もう5時、が正しくないか?」
ジッと見つめてくる夏樹の強い眼差しが怖くて後ずさると、腕を取られて逃げられなくなった。