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ひと夏の恋……そして……
第10章 夏の終りと共に

「それよりあの黒い車、最近よく見かけるわよね」
「また来てるのかい?」
叔母さんとソンちゃんがが窓の外を覗いているから私も覗けば、そこには黒いセダンが止まっていた。
「良く見かけるの?」
「そうなのよ。スーツを着た人がふたり?営業っぽいからまたリゾート開発の話かしらね」
「そんな夢物語な話、誰も信じないさ。私たちは地道にお店を続けるだけ。夏になればこれだけ繁盛するんだ、それだけで十分さ」
叔母さんもソンちゃんもリゾート開発の話に良い印象を持っていなかった。
毎年と言っていいほど夢のような話を持ち込んでは立ち切れになるから、今では誰も真剣に話を聞こうとはしなくなっていると教えてくれた。
「もしもリゾート開発の話が進んだら、この店なくなっちゃうの?」
「そんなことにはならないから安心しな。私がいる間は潰させないさ」
ソンちゃんの言葉は心強くて、本当に大丈夫だと思わせてくれるから不思議だ。
来年は夏だけとは言わずに、この島に住みたいとひそかな願いを心に抱き和泉と会える夜を楽しみに待った――

