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ひと夏の恋……そして……
第10章 夏の終りと共に

「来週の土曜日に花火大会あるの知ってる?」

帰りの車の中、道端に立てかけてある看板を見て和泉に聞いた。

「花火大会?」

「うん。毎年海辺で花火が上がるの。その日だけは船も臨時便を出していつも以上の賑わいなんだよ。その日だけは花火が終わるまで外で遊んでいいから遅くまで一緒に見ようよ」

「花火かぁ。真緒は浴衣とか着るの?」

「和泉が一緒に見てくれるなら着る!」

一応浴衣はあるけど、暑いと言ってきたことがない。
和泉が一緒に見てくれるなら浴衣デートもいいかもと今からワクワクする。

「真緒の浴衣姿かぁ。今から楽しみだね」

その一言ではしゃぐ私に、和泉も満足そうに優しい笑みを浮かべてくれた。
家の近くまで来ると車を止めて別れのキスを交わし、私をきつく、きつく抱きしめてくれた。
その背中に腕を回して抱きつくと、耳元で囁かれる言葉。

「真緒、ずっと好きだから。ずっと愛してるから」

その言葉はどんな言葉よりもうれしかった。
未来永劫続く愛の告白のような気がして私も同じ思いで言葉にする。

「私も好きだよ。ずっとずっと愛してる」

和泉の腕が緩み、お互いのおでこをくっつけて至近距離からみつめあい笑った。
この笑顔を私は一生忘れないと思う――


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