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ひと夏の恋……そして……
第10章 夏の終りと共に

「やっぱり知らなかったか。迎えが来たから帰らなきゃいけない。もう2度と会うことはないと思うから殴られる覚悟で別れを言いに来たって、訳の分からない事言いだして、真緒は知ってるのかって聞いたら何も言わないんだ。真緒を連れてくるから待ってろって言っても船の時間があるからって行きやがった。止めようとしたけど、和泉が乗り込んだ車から降りてきた男たちに殴られて止めることができなかったんだ。すまん」
夏樹の言葉にますます意味が分からなくなる。
和泉が島からいなくなる?
最後だから別れを言いにきた?
「夏樹、それって」
「俺も分かんね~よ。けど、このままじゃいけないってのは分かるから真緒を連れに来たんだ。船が出発する前につくからな。しっかり摑まってろ」
そう言ってアクセルを踏んでスピードを上げた。
前に車がいれば追い越して先を急いでくれる。
小さな島でも船乗り場が島の反対側にあるから30分はかかってしまう。
船が出るまでちょうど20分。
夏樹の運転する車のスピードで間に合うかぎりぎりのところだった。
時計を見ながら祈ることしかできない時間。
もどかしくて、握りしめている手に力がこもる。

