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ひと夏の恋……そして……
第10章 夏の終りと共に

「真緒!」

今まで何も喋らなかった和泉が私の名前をやっと呼んでくれた。
和泉は手すりから身を乗り出して私の名前を連呼する。

「真緒、真緒、真緒!!!」

そのまま海に落ちるんじゃないかというほど身を乗り出すと、スーツを着た男性が和泉の身体を支えて手すりから遠ざけた。
ここからでは何を話しているのかあまりわからないけど、和泉が嫌がっているのが分かった。
和泉が自らこの島を出ようとしているんじゃなくて、あの男たちに無理やり連れだされたのだと理解できた。

「和泉!!和泉!!!」

「真緒!真緒!!」

私の言葉が届けば、同じだけの声で私の名前を呼んでくれる。
男たちに取り押さえられるようにしながらも私の名前を呼ぶ和泉。
港から遠のく船。
遠くなれば遠くなるほど声は小さくなる。
和泉が男たちに取り押さえられているように、私も後ろから夏樹に羽交い絞めにされていた。
それはあたかもロミオとジュリエット。
愛し合っているのに何かに阻まれて引き離される定めのふたり……


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