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ひと夏の恋……そして……
第11章 甦る記憶と共に

「すみません。朝食の準備までしてもらって」
3人分のご飯をよそっていると、佐伯さんは恐縮したように何度も頭を下げる。
「ここに泊まることを進めたのは私ですから。民宿みたいに豪華な食事は出せませんけど朝と夜は用意しますので遠慮なく食べてください」
「ママのお料理、ほっぺが落ちちゃ程おいしいんだよ」
真和は両頬に手を当てて佐伯さんに力説する。
そんなにハードルを上げないでと心の中で叫びながら食卓に簡単な朝食を並べ、楽しい食事が始まった。
3人で囲む食卓。
それは不思議な感覚だった。
初めて一緒に食卓を囲むのに違和感を覚えず、それどころか、ずっと前から一緒に食卓を囲んでいるような気分になる。
笑い顔が少し似ている佐伯さんと真和。
私を見上げて美味しいねと笑う真和の笑顔は和泉と……目の前にいる佐伯さんと重なった……
「真緒さんは食べないんですか?」
「えっ?食べてますよ。――あっ、もうこんな時間。保育園に遅れちゃう」
箸を持ったまま動かない私を不思議そうに見つめる佐伯さんに気が付き、慌てて朝ご飯を食べ始めた。

