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ひと夏の恋……そして……
第2章 逃げてきた場所
「相変わらずマリさんはスパルタだね」
扉から入ってきた昨日の男性は面白そうに笑いながら近づいてくる。
「あら、夏樹ちゃん。いらっしゃい!今日は何にする?」
「今日は真緒ちゃんの様子を見にきただけだから。アイスコーヒー貰うよ」
慣れた感じでカウンターに座ると、その夏樹ちゃんと呼ばれた男性は私の手からプレートを取ってエプロンをするように促す。
何もしないでいると、早く早くと急かすから渋々とエプロンをした。
「じゃあ、これをあの2番テーブルの女性の前に置いておいで。お待たせしましたって言うんだよ」
子供にお使いをさせるみたいな言い方に、さすがにカチンくる。
こんなこと私にだってできるもん、と強がりながら2番テーブルに向かった。
「……お待たせ……しました……」
小さい声だったけど言って逃げるように戻ると「やればできるじゃん」と頭をワシャワシャと撫でて喜んでくれた。
「じゃあ、次はこれね。5番と7番のテーブル。コップが殻だから継ぎ足してくるんだよ」
喜んでくれたのがうれしくて、私は素直に頷いて5番と7番のテーブルを回って水を継ぎ足した。