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ひと夏の恋……そして……
第11章 甦る記憶と共に

「あ~!!千春兄ちゃんだ!!」
店のテラスが見えると真和が大きな声を上げ、私の手を離して佐伯さんの方に走っていく。
仕事の忙しさで忘れていて、真和が言葉にするまで佐伯さんの存在を忘れていた事に驚いた。
だけど、それだけ和泉への気持ちが薄れているのかもしれないと思うと少し寂しく感じた。
「すいません。真和を迎えに行っていたので遅くなりました」
テラスに座っていた佐伯さんに声をかけると、朝と変わらない笑顔を私に向ける。
「気にしないでください。帰ってくる時間を言ってませんでしたからね」
どのくらい待たせたのか分からないけど、佐伯さんは穏やかな表情で真和を抱き上げていた。
「真和くん。保育園は楽しかった?」
「うん、今日も楽しかったよ。ちーちゃんとね、一緒におままごとしたの。僕がパパでちーちゃんがママ。僕とちーちゃんね、ラブラブなんだよ」
真和の話している意味が分からないのか佐伯さんはちらっと私に視線を向けた。
「ちーちゃんは真和の好きな子なんですよ。いつも一緒で、将来は結婚するそうなんですよ」
「そうなんですか、今の子は進んでいるというか……真和くんの初恋なんですね、叶うといいですね」

