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ひと夏の恋……そして……
第11章 甦る記憶と共に
「そうですね。昼間のうだるような暑さが嘘のようですね――もしよろしかったら一緒に散歩しませんか?」
その一言に懐かしさを感じ、和泉もこんな風に私を誘ってくれたんだったと思い出した。
和泉と佐伯さんが立っている場所も同じだし、私がいる場所もあの時と同じで、あの時の感情までが蘇りそうになる。
「真緒さん?」
「あっ、はい。降りていきます」
あの顔で誘われるとイヤだとは言えない。
ただ外を歩くだけだと自分に言い聞かせて佐伯さんの元へと足を向けた。
「お待たせしました」
「そんなに慌てなくてもいいんですよ」
息をあげて駆け寄る私に笑いながら、佐伯さんはゆっくりと歩き始めた。
その後を追いながら、少しだけ真和の部屋に視線を向け佐伯さんに言葉をかけた。
「すみません。真和が起きた時の事が心配なので遠くには行くことはできません」
「分かっていますよ。この家が見える範囲で歩きましょう。ですので1時間ほどおつきあい下さいね」
私の気持ちを汲んでくれたことが妙に嬉しくて、佐伯さんと並んで海辺を歩き始めた。