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ひと夏の恋……そして……
第12章 成長とやさしさ

「ごめんね。ママ寝坊しちゃった」

「ママ、ぐっすり眠ってたもんね。だから千春兄ちゃんと朝ご飯つくったんだよ。ママの分もあるから座ってて」

私の手を引っ張っていつもの席に座らせると、真和は自分用のエプロンをして厨房の方に行きパンを焼き始めた。
そして、火を使い始めた真和を慌てて止めようとする私を佐伯さんが止めた。

「真緒さんの心配は分かりますが見守ってあげてください。少しでもママの役に立ちたいんだと一生懸命練習しましたから」

そう言って佐伯さんが指差した方に視線を向けると、黄身が崩れた目玉焼きと少し焦げたウィンナーとサラダが乗った皿が2枚テーブルの上にあった。

「あれも真和くんが作ったんですよ」

「あれを真和が?」

「そうですよ。ですから大丈夫。見守ってあげましょう」

真和を見れば、踏み台の上に乗って卵を割っている最中だった。
今まで一度も卵を割らせたことはないのに、コンコンと殻を割り、上手にフライパンに割り入れていた。


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