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ひと夏の恋……そして……
第12章 成長とやさしさ
「今度はちゃんと割れたみたいですね」
満足そうに微笑む真和を見て、佐伯さんも安心したように何度も頷き優しいまなざしを真和に向けてくれる。
それは、父親が子供に向ける視線のような気がして仕方がない。
「こうやって、1つ1つできることが増えて行くんでしょうね」
この言葉でさえ父親の言葉だと思ってしまう。
「そうですね。今までは危ないからと火も包丁も触らせていませんでしたけど、それではいけないんですよね。危ないからこそ良し悪しを教えなければいけない」
「見ている側としてはハラハラして仕方がありませんけどね。それも親の役目なんでしょう」
その言葉通り、ハラハラして仕方がない。
私一人だったら手を出して手伝ってしまいそうで、私を踏みとどめてくれる佐伯さんに感謝する。
「でも、こちらが緊張しますね。手に汗かいてますよ」
両手を広げて見せる佐伯さんの手には、言葉通り汗をかいていた。
「私もですよ」
お互いに汗をかいた手を出して笑った。
笑えば少しは緊張もハラハラ感も薄れていた。