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ひと夏の恋……そして……
第12章 成長とやさしさ
「そうだね。今年はなつ兄ちゃんはいないからふたりで見ようか?」
「そっかぁ~なつ兄ちゃんいないんだ――だったら千春兄ちゃんと見ようよ!千春兄ちゃん、花火好きかなぁ~~」
それが当然かのように真和は佐伯さんの名前を出してきた。
夏樹と一緒に花火が見られないと分かった時は泣きじゃくっていたのに、今ではそんな気配さえない。
「ねっ?いいでしょう?仲間外れはだめだよね」
「そうだよね。仲間外れはダメだもんね」
「じゃあ、千春兄ちゃんが帰ってきたらお誘いしなきゃ!」
喜ぶ真和の姿を見ていると、自然と私もうれしくなる。
それに和泉としていた果たされなかった約束。
――今年の花火一緒に見ようね
それが叶うような気がして、ひそかに心がときめいていた。
それから真和と話していると段々と瞼が重くなってくる。
もっと真和と話をしたいと思っていても、下がる瞼には勝てなかった――