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ひと夏の恋……そして……
第12章 成長とやさしさ
「あっ!ママ!千春兄ちゃんね。一緒にね。花火見てくれるんだって」
真和は思い出したかのようにうれしそうに言葉にした。
いつの間に聞いたのかと思っていると、オムライスを作りながら花火の話になったのだと教えてくれた。
「ご迷惑じゃないですか?」
「迷惑なんかじゃありませんよ。今まで花火とは無縁でしたので誘ってもらってうれしいんですよ。夜空に上がる花火はきれいでしょうね」
夏定番の花火が無縁だという佐伯さんは、どんな花火が上がるのかと真和に聞いて楽しそうに話していた。
高校の時から毎年のように見ていた花火だけに、そういう人もいるのだと初めて知った。
「近くで花火大会とかなかったんですか?」
「ありましたけど……学生の頃は塾などで見に行くことはなかったですね。社会に出れば立場上行く暇も学生以上にありませんから」
そう言って少し寂しそうに笑った。
一緒にいて忘れてしまいそうになるけど、彼は佐伯コーポレーションの副社長。
この若さで副社長なのだから忙しいのは当然かもしれない。