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ひと夏の恋……そして……
第12章 成長とやさしさ

「それより、真緒さんは浴衣など着るんですか?」

「浴衣ですか?持ってはいるんですけどね、着付けができないので箪笥に眠ってます」

高校生の時に叔母さんが作ってくれた浴衣。
一度も袖を通すことなく箪笥の肥やしになっている。

「では今年は浴衣を着て花火を見ましょう。私が着付けますから」

「えっ?佐伯さんが着付けするんですか?」

「はい。浴衣程度なら着付けられますので」

涼しい顔をして着付けられると断言する佐伯さんに驚くばかりだった。
それでも、佐伯さんと浴衣を着て花火大会に行けると思うと、遠い昔にやり残してきた宿題を完成させられる……そんな気がした。
それから、食べ終わった後の片付けも自分たちがするからと、何もすることがなかった。
今日は一日真和と佐伯さんに甘えっぱなしで、本当にゆっくり身体を休めることが出来たと思う。
何もできないと思っていた真和が、私の身体を気遣い、食事の準備までしてくれる。
日々成長しているんだと実感できた一日でもあった。
それも佐伯さんのおかげで、出会って3日なのに私たち家族にすっかりと溶け込んでいた。

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