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ひと夏の恋……そして……
第12章 成長とやさしさ
「ねぇ、ママ?今日はなつ兄ちゃんから電話あった?」
布団の上に転がり、本を読もうと開いた瞬間、思い出したかのように夏樹の名前を口にする。
「今日はないね」
「そっか……僕の事、覚えてるかな?」
電話がないことを告げるとしょんぼりする真和は、キュッとシャツを握りしめて泣きそうな顔をする。
ここ数週間は毎日のように一緒に過ごし、夜寝る時も一緒だったから急にいなくなった夏樹の存在が寂しいみたいだった。
佐伯さんと楽しそうに過ごしていても、夏樹への想いが変わらないことにホッとした。
「電話してみようか?」
私の言葉に一瞬にして華やいだ表情をする真和を微笑ましく思いながら電話をかけた。
何度かコールするけど出る気配はなく留守電に代わった。
「でないね。今日はお友達と一緒だから気が付かなかったのかな?」
「なつ兄ちゃん……またここに戻ってきてくれる?僕と一緒にお風呂に入ったり一緒に寝たりしてくれる?」
少し目をウルウルしながら聞いてくる真和が愛くるしくてギュっと抱きしめていた。