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ひと夏の恋……そして……
第2章 逃げてきた場所
どっかに行く?と聞かれてもどう返事をしていいのか分からなかった。
だから何も答えない私に、夏樹さんは少し困りながら頭をポンポンと撫でて顔を覗き込んできた。

「俺と出かけるのイヤ?」

「イヤ……じゃ……ないです……」

顔を覗かれ恥ずかしくて顔を反らしたけど、優しく微笑んでくれた表情が脳裏から離れずに、イヤじゃないことだけは伝えた。

「よし。じゃあ、これ食べたらでかけようか。う~ん……外で晩飯も食べたいし、マリさん遅くなってもいい?ちゃんと送ってくるから」

「そうね。夏樹ちゃんなら信用してるから大丈夫か……ちゃんと送り届けてよね。」

「了解しました!!」

夏樹さんはわざとらしく敬礼をした。
食べ終わるまで待っていてくれた夏樹さんとでかけたのは、それから30分してからで、一度車を取りに夏樹さんの家に寄った。

「こんな車だけど大丈夫?」

駐車場に停まっている車の鍵を開けて、申し訳なさそうに夏樹さんは言った。
家にあるセダンタイプじゃなくて白のワゴンだった。
少し錆びていて、お世辞にも素敵とは言い難い。
それでも父親以外の人の運転する車に乗るのは初めてで、そっちのほうが気になっていた。


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