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ひと夏の恋……そして……
第12章 成長とやさしさ

「何でもないよ。それより好きな子だったり、前カノだったりはいないの?」

『あっ?ああ……いるのはいるけど、結婚して幸せそうにしてるよ』

私の問いかけに一瞬戸惑いを見せた夏樹も、正直に教えてくれた。

『何?心配してくれてんの?』

「そりゃあ、心配するでしょ。同窓会で昔の恋が蘇って一夜限りの夜を過ごすとかよく聞くじゃない?」

『何だそれ。ドラマの見過ぎだって。俺にはお前しかいないんだから。――やっと手に入れたんだ、そんな馬鹿な事して真緒を裏切ったりしないさ』

夏樹の言葉にズキンと心が痛んだ。
私の何気ない一言に、こんなにもはっきりと私への気持ちを言葉にしてくれる夏樹。
それに対して私は……和泉ではないのに和泉に似ている佐伯さんを少しの間だけでも家に泊まらせてしまっている。
この事実を夏樹が知ったら、今のままの気持ちでいてくれるのだろうかと、身勝手だけど不安になってくる。

『どうした?』

「ううん、何でもないよ。少しだけでも夏樹の声を聞けてよかったなって。早く夏樹に会いたいって思っちゃった」


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