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ひと夏の恋……そして……
第13章 私の心はどこに
「えっ?真緒さん?」
涙を流す私に動揺する佐伯さんに、私は静かに首を振った。
「すみません。真和の事を褒められてうれしいんです……真和は生まれたころから父親がいないんです。周りに助けられてここまできましたが、片親だからと馬鹿にされないように子育てしてきたんです。ですから素直で優しいって言ってもらえて、うれしくて――」
そう言葉にしていると、温かなものが私を包み込んだ。
一瞬何が起こったかわからず身動きできないでいると、頭の上から声が降り注いでくる。
「良く頑張りましたね。初めて会った私にも分かるほどに真和くんは良い子に育ってますよ。ですから自信を持ってください――本当に、良く頑張りました」
何度も何度も頑張りましたと声をかけられれば、それと同じだけの涙が流れ落ちていく。
今まで誰にも頑張ったねと言われたことがない。
子供を産んだ私が育てるのは当たり前で、手助けをしてくれたとしても褒めてもらえることはなかった。
だから褒められるのがこんなにもうれしいとは思わなかったし、今まで頑張ってきたこと全てが報われたような気がした。