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ひと夏の恋……そして……
第13章 私の心はどこに
涙を流している間、佐伯さんは何も言わずに私を抱きしめたまま背中を優しくなでてくれていた。

「すいません、泣いたりして」

冷静になり今の状況が恥ずかしくて佐伯さんから離れようとすると、抱きしめている腕を緩めてはくれない。
それどころか、先ほどより強く抱きしめられ抵抗できなくなる。

「あっ、あのっ」

「泣きたいときは泣けばいいんですよ。我慢するのは体に悪い」

戸惑う私に、そんな優しい言葉をかけてくれる。

「今まで、誰にも弱音を吐かずにきたんですよね。近いからこそを言いたいことも言えなかった。だったら何も知らない私に弱音を吐けばいい。何でも聞いてあげますよ」

その言葉に、ずっと私の中に溜まっていた何かが弾けたように感情が爆発した。
こんなに声を出して泣いたのは何年ぶりだろう。
そんな事を考えながら、私は佐伯さんにしがみついて声を上げて泣いた。海辺で遊ぶ観光客が遠目で見ているのが分かっていても止めることなんてできなかった。


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