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ひと夏の恋……そして……
第13章 私の心はどこに
「この島に来た当初は、私もこの満点の星を見て感動していました。だけど生活していくうちにいつしか美しいとも思わなくなった。それどころか、こうやって見上げることもない」
言葉にしながら昔のことが昨日のように思いだされる。
和泉と初めて夜空を見上げたあの日。
和泉も佐伯さんと同じように夜空を見上げて感動してた。
久しぶりに見上げる夜空に、今と同じような言葉を言ったことを鮮明に覚えている。
「それは仕方がないことからもしれませんね。毎日見ているとそれは特別ではなく普通になりますから。それに――それだけ、真緒さんがこの島に馴染んだ、ということなんでしょう」
佐伯さんの言葉に驚いて視線を向けると、佐伯さんは空を見上げたままだった。
その横顔を見ながら、和泉の言葉がよみがえる。
『それだけ真緒がこの島に馴染んでるってことなんだろうね』
それは初めて和泉とふたりっきりで浜辺を歩いた時で、初めて和泉を男と意識した日だった。
その和泉と同じ言葉を言われると、心臓が痛いくらい高鳴る。