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ひと夏の恋……そして……
第2章 逃げてきた場所
それから車で色々な場所に連れて行ってくれた。
と言っても、本当に小さな島で一周するのに時間はかからない。
1時間もすればある程度は見てしまったようで、することがなくなった。

「マジで何もない、簡単に終わったな。さて、これからどうすっかなぁ~」

海辺の空いている路肩に車を停めて夏樹さんが真剣に悩んでいた。
こんな私の為に真剣に悩んでいることがうれしくて、またもチラッと横顔を覗き見る。
夏樹さんは19歳の大学2年生。
大学に行くために島を出て、夏休みになると家の手伝いをするために帰って来ているという。
島で育ったせいか、普通の人より色が黒い。
今時の人みたいに軽く髪の毛を染めて、左耳にピアスひとつ。
細身の身体で足がスラっとしている。
そして笑った笑顔がキュートで、その笑顔を向けられるとドキドキする。
だけど、それが恋だとは思わなかった。

「どうかした?」

ちら見する視線に気がついた夏樹さんが、その視線を私に向けた。
相変わらずその視線から逃げるように外に顔を向けると、夏樹さんは小さなため息をつく。

「あのさぁ、嫌だったら帰る?無理して俺につきあわなくていいから……」

私の反応に困ったような夏樹さんに違うと言いたいのに言葉にできなくて俯くことしかできなかった。


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